相続が発生した際に、故人(被相続人)の財産や義務を受け継ぐ立場にある相続人は、その相続について大きく3つの選択肢の中からいずれかを選ぶことになります。これらの選択は、被相続人の財産状況や相続人自身の意向によって慎重に判断されるべき重要なものです。

・単純承認
これは最も一般的な選択肢で、被相続人のすべての財産と負債を無条件に引き継ぐ方法です。プラスの財産(現金、預貯金、不動産、有価証券など)だけでなく、マイナスの財産(借金、未払金、連帯保証債務など)もすべて相続することになります。もし被相続人に多額の借金がある場合、相続人はその借金を自ら返済する義務を負うことになるため、相続財産の全体像を把握した上で選択する必要があります。

・限定承認
限定承認は、プラスの財産の範囲内でのみマイナスの財産を引き継ぐという方法です。例えば、被相続人のプラスの財産が1000万円あり、マイナスの財産が1500万円ある場合、相続人はプラスの財産である1000万円までしか借金を返済する義務を負いません。つまり、相続人の固有の財産まで使って借金を返済する必要がないため、被相続人の財産状況が不明確な場合や、借金がある可能性がありつつもプラスの財産も残したい場合に有効な選択肢です。ただし、この方法は相続人全員が共同で申述する必要があるなど、手続きが複雑であるという側面もあります。

・相続放棄
相続放棄は、被相続人の遺産を一切相続しないという選択です。これを選択すると、プラスの財産もマイナスの財産もすべて放棄することになり、初めから相続人ではなかったものとして扱われます。一般的には、被相続人に多額の借金があり、単純承認すると相続人がその借金を抱え込んでしまうリスクがある場合に選ばれることが多いです。